若旦那様の憂鬱
それでも時は無情にも彼女を大人にしていく。
成人式の日。
兄の顔をして近付く度に、溢れ出そうになる思いをどうにか押し殺し、これから会うであろう同級生達に嫉妬した。
それなのに、式を終えたら今度は同窓会に行くと言う。
どこまで俺をハラハラさせたら気が済むんだ?
そう苛立ちながら、廊下を歩く。
ああ、そうだ。
同窓会に着て行く服はあるのだろうか?
一日中着物でいるのはキツいと言った手前、どうにかしてやらなければと、レンタル衣装を思い付く。
出来れば買い与えてやりたいが、生憎そんな時間は無い。
そう思い、再度花のいる茶室に戻る。
何も考えず襖を開けると、
そこには肌襦袢を身に付けただけの花が居た。驚いて固まる。
慌てて背を向けるが、
一瞬で脳裏に焼きついて不覚にも欲情しそうになる。
ああ、また好きが溢れ出そうになる。
それをどうにか理性で抑え込み、伝えたい事だけ一方的に言ってその場から逃げるように去る。
ああ、誰も彼女の美しさに気付かないで欲しい。
大事に大事に育てた俺の花を、綺麗に咲くその花を、
どうか誰も摘み取らないでくれ…。
そんな事をひたすら心で祈りながら、俺は慌ただしく仕事に戻る。
成人式の日。
兄の顔をして近付く度に、溢れ出そうになる思いをどうにか押し殺し、これから会うであろう同級生達に嫉妬した。
それなのに、式を終えたら今度は同窓会に行くと言う。
どこまで俺をハラハラさせたら気が済むんだ?
そう苛立ちながら、廊下を歩く。
ああ、そうだ。
同窓会に着て行く服はあるのだろうか?
一日中着物でいるのはキツいと言った手前、どうにかしてやらなければと、レンタル衣装を思い付く。
出来れば買い与えてやりたいが、生憎そんな時間は無い。
そう思い、再度花のいる茶室に戻る。
何も考えず襖を開けると、
そこには肌襦袢を身に付けただけの花が居た。驚いて固まる。
慌てて背を向けるが、
一瞬で脳裏に焼きついて不覚にも欲情しそうになる。
ああ、また好きが溢れ出そうになる。
それをどうにか理性で抑え込み、伝えたい事だけ一方的に言ってその場から逃げるように去る。
ああ、誰も彼女の美しさに気付かないで欲しい。
大事に大事に育てた俺の花を、綺麗に咲くその花を、
どうか誰も摘み取らないでくれ…。
そんな事をひたすら心で祈りながら、俺は慌ただしく仕事に戻る。