若旦那様の憂鬱
揶揄う柊君はこの際無視して、フランスパンを切ろうとパン切りナイフでザクザクと切り分ける。
「っ痛。」
イライラかドキドキかわからない感情を、パンに込めて切っていたせいか指まで切ってしまう。
慌てた柊君は近付いて来て私の指をぎゅっと握る。
「何やってるんだよ…。」
心配そうな顔を向け、傷口を消毒する為か蛇口に私を引っ張り連れて行き、切り口に水を当てる。
気付けば、背中から抱き込まれるような体制で、
「だ、大丈夫だから、着物汚れちゃう。
早く離して…。」
爆発しそうな心臓をなんとか抑え込み、必死で逃げようとするのに、
「こんな時に、着物なんてどうだっていい。」
柊君は私の指を掴んで離さない。止血しようとキッチンペーパーで抑えるが、みるみるうちに真っ赤に染まってしまう。
「病院へ行こう。」
柊君が珍しく慌てだし私の傷口をタオルで巻いて、
コンロの火を止め、唖然とする私の手を引っ張り強引に玄関まで連れて行く。
「ま、待って、待って……お兄ちゃん!」
私は、柊君が血が苦手な事を知っている。
柊君のお母さんが亡くなる前に吐血したのを見てからだと聞いた事がある。
何とかして落ち着かせなきゃと焦って咄嗟に呼んでしまう。
言ってはいけない一言を…
「っ痛。」
イライラかドキドキかわからない感情を、パンに込めて切っていたせいか指まで切ってしまう。
慌てた柊君は近付いて来て私の指をぎゅっと握る。
「何やってるんだよ…。」
心配そうな顔を向け、傷口を消毒する為か蛇口に私を引っ張り連れて行き、切り口に水を当てる。
気付けば、背中から抱き込まれるような体制で、
「だ、大丈夫だから、着物汚れちゃう。
早く離して…。」
爆発しそうな心臓をなんとか抑え込み、必死で逃げようとするのに、
「こんな時に、着物なんてどうだっていい。」
柊君は私の指を掴んで離さない。止血しようとキッチンペーパーで抑えるが、みるみるうちに真っ赤に染まってしまう。
「病院へ行こう。」
柊君が珍しく慌てだし私の傷口をタオルで巻いて、
コンロの火を止め、唖然とする私の手を引っ張り強引に玄関まで連れて行く。
「ま、待って、待って……お兄ちゃん!」
私は、柊君が血が苦手な事を知っている。
柊君のお母さんが亡くなる前に吐血したのを見てからだと聞いた事がある。
何とかして落ち着かせなきゃと焦って咄嗟に呼んでしまう。
言ってはいけない一言を…