若旦那様の憂鬱
「そう言えば、花ちゃんお見合いするんだって?」

はっ⁉︎
突然言われて柊生は頭が真っ白になる。

「花がお見合い⁉︎本人が言ってたんですか?」
寝耳に水だ。そんな話一言も…

親父か?瞬時にそう思う。
花が自分からお見合いしたいなんて言う筈がない。
まだ、20歳になったばかりだ。

大学だって後2年はあるし、幼稚園の先生の夢だってまだこれからだ。

「あれ?レンタル店の京子さんから聞いたんだけど…違った?」

「…いや、僕は聞いてませんが、そうですか…
あ、これありがとうございました。」

柊生は急ぎ事務所に戻る。

親父に真相を聞かなければ、心が騒ついてこのまま仕事を続けるには、気になって手に付きそうもない。

事務所に戻るが生憎そこに父は居らず、聞くと庭で植木屋さんと打ち合わせ中だと言う。

仕方が無いので、花の写真を丁寧に机の引き出しにしまい、館内の見回りに戻る。

モヤモヤした気持ちを押し殺し、無理矢理仕事モードに気持ちを立て直すが…
花が誰かのものになる?そんな事はあり得ない。

今までだって恋愛については奥手で、男の影すら見たことも無いからどこか、安心していた。

強いて言えば、高校の時に男性グループのコンサートに友達と行っていたくらいで、男とデートすらした事が無いのではとたかを括っていた。

まぁ、康生を使って、花に変な虫がついてないか何となく探りを入れたり邪魔をさせたり、意図的に近付けさせないようにしたり、ちょっとした工作はしていたが…。
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