彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
夜は恋人
漂う彼の部屋の香り。今日はアロマオイルを焚いている。ウッディな香りがする。
「……あ、ダメ」
彼の手がまた上がり、何も言わずにまた覆いかぶさる。また、収まっていた衝動が身体中に巡ってくる。
「菜摘、愛してる」
そう言うと、私が弱いところを重点的に攻めてくる。どんどん熱が広がって、彼にしがみついて声をあげてしまう。
もうだめだと思った時には何かが弾けて、彼も止まった。彼は満足したように私を抱き寄せると静かに寝息を立て始めた。
彼の秘書になったときは、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。
眠る彼を見ていると、普段の厳しい顔は全く見えない。仕事とベッドの彼は支配者だ。それ以外では別人のように甘い。
付き合いだして、彼のギャップにさらに引き寄せられたような気がしている。
朝になると彼がシャワーを浴びている間に、準備した朝食を並べていく。
彼より早く出社しないといけない私にとって朝は戦争だ。朝食はそのせいで手抜き。片付けの最後は彼にお願いする。
身体を拭いた彼が席につくと、一緒に朝食をとる。私達の関係は会社では直属上司とその秘書。
恋人になってしまい、彼のマンションへ来ることが多くなった。今日は月曜日。日曜日の夜から泊っている。
さすがに友達のところに泊まるというには回数が多くなってきた。無理が出てきている。
私は実家通いだ。
ただ、秘書になってから、片道一時間半の距離がかなり辛くなってきた。
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