彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
すごい。さすが秘蔵っ子。会長への話し方もうまい。
美味しい料理をいただきながら、仕事の話などしていると、会長がそろそろといってまるで見合いの両親のように先に帰ってしまった。
「さあて、本音で話そうか、森川さん」
あぐらを掻いた達也部長はこちらを見た。
「さっきも言ったけど、君と俊樹さんとの関係は業務上のみかな?」
ふふふと笑いながら、正面から突破してくる。
「……それについては、ノーコメントとさせて下さい。本人のいないところでは言いたくありません」
「はは、否定しないことがつまりそれ以外の関係もあるということだよ」
「否定も、肯定もしません」
「なるほどね……まあ、いいだろう。それならそれで何も別れろというつもりもないし、俺と付き合えと言うつもりもないよ」
あっけにとられて、部長の顔をまじまじと見つめた。
「なんだよ、俺が君を好きになると言うとか思った?」
「そういう意味ではありません。部長は最初から担当直入で、どんな面倒くさいこともすぐに片付きそうですね」
にやりと笑う部長。
「ハッキリ言っておくよ。俺は自分の相手はこの会社で選ぶつもりはない。俺の交際相手は決まっているんだ」
「そうですか。それは、それは……さぞかし素敵な人なんでしょうね」
嫌みな目を向けて相槌を打つ。