彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「そうだ、君の将来については役職や仕事すべて君の希望を叶えると約束する。僕に付いてきてくれるなら。プライベートについては干渉しないから好きにしてくれ。あと、君は喫茶店に戻るつもりかだけ聞いておこうかな?」
私の身辺調査をされてるの……当たり前かな。
「それについては、まだなんとも言えません。ただ、ここでのキャリアを捨てるほどの価値が喫茶店には今のところないかもしれないです。両親の今後と店の後継者についてはまだ話し合いの余地があると思っているので……」
「良かった。それなら、前向きに考えていこう。俊樹さんには何を言われても返事しないでね。プライベートの関係は充実してくれて構わないよ。仕事を剣に振りかざすようなら、こちらにも考えがあると言っておいていいよ」
正直とてもよく似ている。俊樹さんと同じように若くてすごく頭が回る。すべて先回りするタイプ。
嫌な予感がする。本当なら絶対敵に回したくない人が目の前の達也さんだろう。
会長を手なずけて前途洋々で仕事もできそう。彼を味方にするのが、ミツハシフードサービスという会社での長生きのこつだということはわかる。
でも、それでもきっと……俊樹さんは私を渡したくないから彼と戦うだろう。つまり、私は巻き込まれる。
下を向いてため息しか出ない。ふと目線を上げた。
余裕の笑みを浮かべた達也さん。全部どうなるかわかっていて話している。本気なんだと思った。
深夜自宅についたが、恐ろしくて眠れなかった。予想通りの展開が翌日から待っていた。