彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「菜摘、お前は公私ともに俺のものだと言ったはずだ。誰にも絶対に渡さない。他の奴の仕事はさせない」

 やっぱりね。こうなるような気がしていた。正直、彼の愛は重い。

 愛されてるのは嬉しいけど、裏切ることはないということくらい信じてほしい。

「とにかく、お帰りになってから話しましょう。私も会議の手伝いがありますので、失礼します」

「おい、菜摘、切るな」

「だから、時間なんです。夜待ってますから。気をつけて帰って下さい」

 受話器を置くと、突っ伏した。びっくりした。すぐに電話が鳴ったのだ。

「はい、秘書室森川です」

「森川さん、おはよう。三橋です。昨日はお疲れ様でした」

「こちらこそ、ありがとうございました」

「俊樹さんから連絡あった?」
 
 今度はこっちかという思いがする。鋭すぎて、疲れる。

「……はい。すでに怒られました」

「はは、想像通りだったな。で、伝言してくれた?」
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