彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「全部言えませんでしたけど、とりあえず仕事を武器にする云々はまだ言ってません。それ以上言うとホントに大声で怒鳴り出しそうだったんです」

「面白くなってきた」

「面白いわけありません。三橋部長は俺を敵に回す気かと言ってましたよ」

「俊樹さん、戦う気満々だな。これは少し準備がいりそうだ」

「人ごとみたいにやめてください。私は巻き込まれて迷惑です」

「任せろと言っただろ。とにかく、この会社にいるんだから異動は絶対だ。特に会長命令だ」
 
 それがよくないんだということくらいわかっているだろうに……もう少しやり方があったはずだ。こんな不意打ち、誰だって腹が立つ。

「わかりました。私がなだめると逆効果です。後はお任せ致します」

「了解。またね」

 にやりと笑う部長の姿が脳裏によぎった。

 
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