彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
ベッドで私を抱き寄せ、キスをしながら話し出した。
私はぐったりして、口もきけない。
「達也から、電話が来た」
「……」
「明日にもあいつと話をする。全部それからだ。何かお前に言ってたか?挑発ばかりしてきやがった」
目に浮かぶようだ。ペットボトルに手を伸ばすと、一口飲んだ彼が口移しで水を飲ませてくれた。
「今回のことは目をつぶったほうがいいと思うの、だって会長命令だった。断ったりしたらきっと、いくら俊樹さんでもまずいと思う」
「別に会長なんて怖くない」
身体を起こして正面を向く。彼が身体をこちらに向けた。目が怖い。
「菜摘。お前、俺を信じてないのか?何があろうと側に置くと言ったろ」
「異動は命令よ。いくら何でも断るなんて無理よ。しかも新部長の達也さんは、いずれミツハシの社長になる人なんでしょ?」
「達也は会長の秘蔵っ子だ。社長になるのは昔から決まっていた。あいつは人間関係の構築もうまい」