彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
作戦
翌朝、出社前に彼から午前中のスケジュールの調整を頼まれた。指示通りにするには少々困難があったが、こんなことを当日に頼まれたのは初めてだった。
何かする気だとすぐにわかった。でも問い詰めても教えてくれない。異動のことだとピンと来た。
心配だったが、僕を信じろというあの言葉を信じようと私も腹を決めた。何かあれば行動を共にして会社を辞める。
始業時刻を過ぎても、彼は部屋へ出社しなかった。1時間後、部屋へ入ってくると今度は営業部へ行くと出て行った。
私を通さないでやっているということはよほど急いでいるんだろう。
こういうときは、とにかく従うしかないので黙々と仕事をこなした。今日は午後から以前ごり押しで入れた氷室専務との面会がある。
専務は俊樹取締役の実の兄であり、氷室商事の実質の後継者と考えられている。お会いしたことはない。同行となれば手土産も準備しないといけないし、何より緊張する。
営業部からやっと彼が戻った。すでに昼まであまり時間がなかった。ノックの音がする。返事をすると突然、三橋新業務部長が部屋に現れた。
「お疲れ様です。永峰取締役。驚きましたよ、さすがですね」
「いや、まだ分からない。布石を打つしかできないからな」
何かする気だとすぐにわかった。でも問い詰めても教えてくれない。異動のことだとピンと来た。
心配だったが、僕を信じろというあの言葉を信じようと私も腹を決めた。何かあれば行動を共にして会社を辞める。
始業時刻を過ぎても、彼は部屋へ出社しなかった。1時間後、部屋へ入ってくると今度は営業部へ行くと出て行った。
私を通さないでやっているということはよほど急いでいるんだろう。
こういうときは、とにかく従うしかないので黙々と仕事をこなした。今日は午後から以前ごり押しで入れた氷室専務との面会がある。
専務は俊樹取締役の実の兄であり、氷室商事の実質の後継者と考えられている。お会いしたことはない。同行となれば手土産も準備しないといけないし、何より緊張する。
営業部からやっと彼が戻った。すでに昼まであまり時間がなかった。ノックの音がする。返事をすると突然、三橋新業務部長が部屋に現れた。
「お疲れ様です。永峰取締役。驚きましたよ、さすがですね」
「いや、まだ分からない。布石を打つしかできないからな」