彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「それはこちらの台詞だ。君は僕の彼女への思いを、自分と一緒だと思わないことだよ。理解してもらおうとも思わないが、僕は彼女を仕事上もプライベートでも一分たりとも人に預ける気はないんだ」
達也は、黙って考えている。
「彼女以外の適任の秘書がいれば考えましょう。数ヶ月借りるだけでもダメですか?」
「君なら彼女以外の人も探せるだろうし、育てていくこともできるだろう。自分の色に染めることもできるはずだ」
菜摘は通常の秘書とは違う仕事をさせている。僕にとって有益かつ彼女の能力を発揮させる形でのサポートをさせているのだ。
秘書的なこともさせているが、本来秘書にはさせないような仕事も業務関係ではいまだにやらせている。
だから、秘書として渡しても、彼女がいわゆる秘書業務の中でやったことのないこともあるだろう。
達也が言っても無駄だと諦めた。両手を上げて頭を振りながら出て行った。すると、入れ違いに菜摘が入ってきた。
達也が出て行くのを見送ると、ため息をついて心配そうにこちらを見た。
俺は彼女のもとへ駆けていき、ついこらえられずにぎゅっと抱きしめた。菜摘が腕を押して一歩下がるとこちらを見た。