彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
味方
氷室商事の本社は都心の一等地にある大きなビルだ。他社は入っていない。つまり自社ビルである。
役員フロア行きのエレベータは奥にあり、そちらに二人で乗った。彼はこんなところの御曹司だったのか。私はますます気が引けてきた。
緊張が顔に出ていたのか、彼に頬をつつかれた。
「大丈夫だ。何を緊張している?」
「……どうして、私も同行するんですか?」
普通、商談に秘書が同行することはほとんどない。それなのに、今回は取締役就任後だからとなにか訳の分からない理由で丸め込まれた。
忙しかったのに……。それでなくても午前中スケジュールキャンセルしたからいろいろ大変なのに……。
ふくれっ面になるのを、彼が上から笑ってみている。チンという音とともにドアが開いた。緊張がマックスになった。役員フロアがうちより立派だ。
あっという間に部屋へたどり着き、まるで実家のような気やすさでノックをすると入っていく。明るい髪色の系統の違う美男子が彼を待っていた。
「俊樹、久しぶりだな。元気か?」
「兄さんも。忙しいでしょう。義姉さん、お久しぶりです」
専務の隣に立つ、長い黒髪の美しい女性がどうやら専務の秘書で奥様だ。にっこりと笑いお辞儀をする。私を見てまた微笑んでくれた。私もお辞儀をする。
役員フロア行きのエレベータは奥にあり、そちらに二人で乗った。彼はこんなところの御曹司だったのか。私はますます気が引けてきた。
緊張が顔に出ていたのか、彼に頬をつつかれた。
「大丈夫だ。何を緊張している?」
「……どうして、私も同行するんですか?」
普通、商談に秘書が同行することはほとんどない。それなのに、今回は取締役就任後だからとなにか訳の分からない理由で丸め込まれた。
忙しかったのに……。それでなくても午前中スケジュールキャンセルしたからいろいろ大変なのに……。
ふくれっ面になるのを、彼が上から笑ってみている。チンという音とともにドアが開いた。緊張がマックスになった。役員フロアがうちより立派だ。
あっという間に部屋へたどり着き、まるで実家のような気やすさでノックをすると入っていく。明るい髪色の系統の違う美男子が彼を待っていた。
「俊樹、久しぶりだな。元気か?」
「兄さんも。忙しいでしょう。義姉さん、お久しぶりです」
専務の隣に立つ、長い黒髪の美しい女性がどうやら専務の秘書で奥様だ。にっこりと笑いお辞儀をする。私を見てまた微笑んでくれた。私もお辞儀をする。