彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「はは、驚いているぞ、隣の彼女。大丈夫なのか?」
こちらを見た彼は、私の手を無言で握ってきた。
「お前のあちらでの状態はこっちも把握している。驚くことじゃないだろう?父さんがお前を好き好んで名字まで代えさせて潜入させているのは、それなりに理由があるからだ。あちらの代替わりもそう遠くないだろうし、うちも再来年辺りには決まるだろう」
「再来年。そうですか、おめでとうと言っておいたほうがいい?兄さん」
「どうだろうな。当然、お前をこちらに呼び戻すのが条件だと父さんには伝えてあった。それには、そちらの会社にそれなりの手土産が必要だ。今回のことはその手土産としては大きすぎるくらいだ。その額に関しては少し調整させてくれ。お前も根っこはこちらの人間なんだから、それくらいはわかるだろう」
「それは、あちらを最初牽制するにはその額が必要だったのです。着地点はいくらでも代えられると思いますよ。とにかく、それはあとで。菜摘のこと、応援してもらえますか?」
彼をじっと見つめる専務の目が、こちらへ向いた。
「森川さん。俊樹と結婚したとして、こちらの会社に来る気はありますか?」
彼が握る手の力が強くなった。彼を見る。私を信じているのね。こちらをちらっと見るとうなずいて口を挟まない。
「それがこちらで可能であれば、もちろん付いてきます。あちらを依願退職することになったとしても、です」
こちらを見た彼は、私の手を無言で握ってきた。
「お前のあちらでの状態はこっちも把握している。驚くことじゃないだろう?父さんがお前を好き好んで名字まで代えさせて潜入させているのは、それなりに理由があるからだ。あちらの代替わりもそう遠くないだろうし、うちも再来年辺りには決まるだろう」
「再来年。そうですか、おめでとうと言っておいたほうがいい?兄さん」
「どうだろうな。当然、お前をこちらに呼び戻すのが条件だと父さんには伝えてあった。それには、そちらの会社にそれなりの手土産が必要だ。今回のことはその手土産としては大きすぎるくらいだ。その額に関しては少し調整させてくれ。お前も根っこはこちらの人間なんだから、それくらいはわかるだろう」
「それは、あちらを最初牽制するにはその額が必要だったのです。着地点はいくらでも代えられると思いますよ。とにかく、それはあとで。菜摘のこと、応援してもらえますか?」
彼をじっと見つめる専務の目が、こちらへ向いた。
「森川さん。俊樹と結婚したとして、こちらの会社に来る気はありますか?」
彼が握る手の力が強くなった。彼を見る。私を信じているのね。こちらをちらっと見るとうなずいて口を挟まない。
「それがこちらで可能であれば、もちろん付いてきます。あちらを依願退職することになったとしても、です」