彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
 * * * * *

 朝から晴天の日曜日。ご両親にご挨拶すると、拍子抜けするほどすんなりと結婚を認めて頂けた。
 
「ほら、言ったとおりだったろ。菜摘は絶対気に入られると思っていたよ。義姉さんだってイチコロだったしな」

 氷室商事への入社は全く心配いらないとお父様から言われた。ミツハシフードサービスを辞めるのは最悪結婚退社という形にすればいいと言われた。

 結婚式は、私の両親も含め相談が必要だが、少なくとも緑ちゃんの出産前はない。大きな披露宴を覚悟してほしいとお母さまから言われてしまった。ミツハシにも在籍していた。つまり両方の会社関係者を呼ぶ式になるということだ。

 彼の今後については、今の会社との相談ももちろんだけど、氷室商事には役員として入ることになるのは間違いないと言われた。

 つまり、専属秘書として今まで同様彼についていくということになる。
 
「これからの菜摘はやっと俺の妻になった。会社では秘書のまま、いずれ俺の子供の母親にもなってもらう。ああこれで安心だ。どんなときも俺の側で目の届く範囲内でいてもらう。だれにも渡さないと決めていたが、これで俺も安心して生きていける」

 生きていけるって、大げさすぎる。

「だめよ、そんなこと言ってちゃ。私がいなくなったらどうする気?」
 
 こちらを怖い顔でのぞきこみ、すぐにこう言った。

「あの世に行くときも一緒だ。とにかく、子供が出来たとしても一人にはしないからな。お前がいないと思うだけで、ぞっとする」

 すぐに抱きつかれて、キスされた。
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