彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.1】
「そうだな。森川さんに頼めば、書類もなんとか当日中にごり押しで回せると本部長達に絶対思われてるな」
「そういうことですか……わかりました、私が悪いんですよね。これからは、ノーと言える森川菜摘になります」
今日もボスである彼に振り回されている。彼の命令は絶対だ。
秘書の私は、朝から取引先との午後の訪問スケジュールを変更すべく、スケジュールの組み替えに頭を悩ませる。
当時業務部所属の入社2年目だった私が、たまたま担当部長に就任した彼の秘書も兼務したのがはじまり。
役員室についてこいというのが、なぜか恋の告白だった。
去年の冬、取締役昇進が内定したころ、私に秘書室への異動を説得すると食事に連れて行かれた後、ホテルの上階バーで口説かれた。
彼の仕事の能力はもちろん、ウイットに富んだ会話、茶目っ気のある普段の様子も魅力的と感じていたのは事実だった。
私は、恋愛に免疫がなかった。
そして好きかもしれないと意識し始めていた彼から正面突破で告白されて、その夜彼にはじめてを捧げてしまった。