一匹狼が番犬になるまで。

一匹狼

高2、春


「京(みやこ)、おはよー!」

ガヤガヤ騒がしい教室の中、同じクラスの友人の有紗が挨拶しながら私の机にやってきた。
彼女は1年の時から同じクラスで、1番仲のいい友人だ。
少しゴシップ好きなところがあるけれど、明るくて面白く、話をしていて飽きない。


「有紗おはよう」
「ねえ、昨日テレビ見た?俳優の秋山くんが…」

興奮気味に有紗が話す途中で、ガラリと教室の扉が開く。
入ってきた人物を見て、教室が一瞬固まった。

その人物は、黒の短髪につり上がった目、ムスッと閉じられた唇が近寄りがたい雰囲気が漂っている。
彼はみんなの視線も気にすることなく自分の席にドカッと座った。


「帯島だ…。相変わらず顔怖いよね」

有紗がヒソヒソと耳打ちしてくる。

教室に入ってきた帯島和臣(おびしまかずおみ)は、学校でも悪い噂の絶えない問題児だ。
上級生と喧嘩して病院送りにしたとか、親がヤクザだとか陰で言われていて、近づこうとする勇者は誰もいない。

「京、帯島くんと一緒の図書委員でしょ?大丈夫なの?」

有紗が気の毒そうな目で見つめてくる。

「大丈夫…多分。まだあんまり話したことないんだけど。
せっかく同じ委員会だし、少しは仲良くなれたらいいな」
「ほんと京ってお人好しっていうかなんていうか…」


大袈裟に肩をすくめた後、有紗がニマニマしながら顔を近づけて続ける。


「顔が可愛い上に性格までいいとか、これでモテないわけないわ。

ねえしってる?2組の佐伯くん、京のこと好きなんだって。2組の王子オトすとは、流石だわ〜」




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