一匹狼が番犬になるまで。
「私の察してアピールは確かにわかりにくいかもしれないけど、帯島くんは逆になんでもはっきり言いすぎ!
そうやってきつい言葉ばっか使ってたら、かえって本当に伝えたいことも伝わらないよ!
さっきだって、助けてくれたのはありがたいけど感謝より先にムカムカが勝ったもん!」
ビシッと指をさしなから声をあげた。
帯島くんは珍しくポカンとした表情を向ける。
言った。遂に言ってやった。
ずっと心の隅で思っていたことだ。
私と仲良くなる気がないにしても、私のことが嫌いにしても、せめてもうちょっと優しい言い方とかあるのでは?とか。
集団生活をする以上必要最低限のコミュニケーションくらい心がけてくれてもいいのでは?とか!
「なんだお前急に、さっきまであんなオロオロしてたくせに。
俺の時だけ急に饒舌になるな」
「そっちが言いたいことははっきり言えっていったんじゃん!」
「あーーーうるせえ!できるなら最初からそうしてろ!」
ぎゃいぎゃいと二人で子供のような喧嘩を繰り広げる。
普段顔が怖くて何考えているかわからない帯島くんが、いつもより少し幼く見えた。
「もういい、仕事の邪魔だ、さっさと部屋に戻れ」
「帯島くんが先に絡んできたんでしょ…」
「絡む言うなアホ」
チッと舌打ちをすると、帯島くんは私の手からカラのコップをひったくり、補充したてのメロンソーダを注いで、私の手に戻した。
そしてそのままその場を去ろうとする。
「あっ、帯島くん。
お仕事頑張って!また月曜日!」
帯島くんは帯島くんは振り返らないまま、片手をひらりと振った。
反応が返ってくるとは思わなかった私は、思わずそのまま背中を眺めていた。