一匹狼が番犬になるまで。
「ええ!?なにそれ!
て言うかなんでそんな話知ってんの?」
「いいじゃん別に!てか、OKするの?」
「いや、OKもなにも、まだ告白すらされてないし」

赤くなる私に有紗は「いつ知り合ったのか」だの「他に好きな人でもいるのか」だの追撃を続ける。

私はいたたまれなくなってトイレに行くと言って逃げ出した。




「朝比奈(あさひな)さん」

トイレから帰る途中、後ろから声をかけられる。
振り向くと、さっきまで話題に上がっていた佐伯くんがいた。
ちょっと動揺しながら返事をする。

「あ、お、おはよう、佐伯くん」
「おはよう。今日1時間目なに?」
「数学だよー、朝から数学辛いよ」
「うっわ、かわいそう!
俺らは総合。委員会なに入るかとか決めるんだって。楽だわ」
「そうなんだ、うちのクラスは昨日委員会決まったよ」
「へー」

当たり障りのない雑談をしていると、突然佐伯くんの目が泳ぎ始めた。


「あー、朝比奈さんは委員会なに入った?」


佐伯くんのわずかに頰が赤くなっている。


「図書委員。仕事多いからあんまりなりたくなかったのに、じゃんけん負けちゃった」
「そうなんだ、お疲れさん」


話していると、予鈴が鳴ったので自分のクラスに戻った。
さっきの有紗の話を思い出す。

佐伯くん、私が委員会どれに入ったか聞いてくるなんて、もしかして私と同じ委員会入ろうとしてたりして…。
いや!流石に自意識過剰か!
話の流れでたまたま聞いただけかもしれないし!

一人で悶々と考えている間にホームルームが始まる。

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