一匹狼が番犬になるまで。
ーーー

ある日の休み時間、男子たちが突然大声を上げた。

「クラス替えしてもう2週間経ったし、そろそろクラスの親睦会しようぜ!」

その一声に、男子も女子もわらわらと集まる。


「今週の土曜、昼からでどう?部活ある奴もだいたい昼までで終わるし」
「いいじゃん、やろうよ!」
「うわー、楽しみ!どこいく?」
「大人数で入れるとことか、カラオケとかくらいしかなくない?」
「そうだ、ついでにクラスのグループライン作ろうぜ!行事とかであったほうがいいっしょ!」


みんなワイワイ話し出す。
クラス替え直後はなにかとばたついていて、ようやく落ち着いてきた頃だからみんな乗り気だ。
私もスマホを取り出して、グループに参加する。

すると、ガラリと教室の扉が開いた。
教室に戻ってきた帯島くんだ。
みんなが集まって話しているのをちらりと見たが、すぐ興味なさげに目をそらして席に着いた。

クラスの輪に入る気のない帯島くんに、誰もに親睦会のことを伝える様子はない。
また嫌がられるかも、でもクラスの一員である帯島くんに親睦会のこと何も伝えないのもなんだか気持ち悪いよね、と思いながら意を決して声をかける。


「帯島くん、今週の土曜にクラスで親睦会やるんだけど、良かったら帯島くんも来ない?」


帯島くんはちらりとこちらを見たあと、「予定がある」と素っ気なく返した。


「そっかあ…、残念だね。
あ、あとそれと、今クラスのグループライン作ってるんだけど、帯島くんも招待していい?
これから行事とかで連絡事項伝えるのに使うだろうから」
「俺ラインしてねえから」


驚いた。今時みんな使っていると思っていた。
まあ確かに便利な反面、気軽に連絡がしやすいせいで人とあまり関わりたくない人には煩わしいのかもしれない。
一匹狼の帯島くんがラインを器用に使いこなしている姿は確かに想像できない。

「そっか!
じゃあ、よければメアドだけ交換しない?グループラインに連絡がきたら、そのまま帯島くんにメールで伝えるよ!」

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