一匹狼が番犬になるまで。
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土曜日。

予定していた親睦会が無事開催され、高校近くのカラオケ店のパーティールームに集まった。
懇親会の主催の高宮くんがジュースを片手に音頭をとる。

「今年1年、最高のクラスにしていこうぜ!乾杯!」
「かんぱーい!!」

乾杯した後は、隣の子と喋ったり歌を歌ったりと、各々自由に過ごしている。
私は有紗と他女子数名でお菓子を食べながら話をしていた。

「ほんと、京ちゃんって美人だよね!
1年の時から有名だったよ〜3組にめちゃくちゃ可愛い子いるって!
同じクラスなれて目の保養だわ、助かる」
「でしょ?うちの京はマジ激かわだから!クラスのアホ男子たちに簡単には渡せないわ〜」
「やめてよお母さん恥ずかしい!」
「有紗は京のお母さんなの?」
「毎日保護者連れで登校してんのかよ」

アハハ、とみんなで笑いあう。

「まあ、うちのクラスのアホ男子たちにはやれないけど、佐伯くんくらいイケメンだったらあげてもいいかなー」

突然有紗が爆弾を投下してきて、思わずジュースを吹き出しそうになった。
有紗の発言に、周りの女子がはしゃぎだす。

「え、なになに?佐伯とできちゃってるの?」
「まじ!?美男美女カップル!TikTok載せてえ」
「違うよ!付き合ってないよ!なんでTikTok?」
「そうそう、まだ付き合ってないよ〜佐伯が京を好きって噂があるだけ!」
「きゃー!!」

突然開催された恋バナにみんながきゃいきゃい盛り上がり、野球部の鳥羽くんが歌うミスチルなんて誰も耳に入っていない。

「そーいやこの前廊下で佐伯と二人で話してたよね?美男美女すぎて覚えてるわ」
「何話してたの?愛の告白?」
「廊下でとか勇者すぎるでしょ!ちがうよ普通に雑談!!
委員会どこ入るのー?とか!!」
「てか佐伯も図書委員だったよね?もしかして京おっかけてきたんじゃない?」
「ストーカーかよ!」


まずい。佐伯トークがどんどん白熱してくる。
女子たちの追及に耐えられず、空になっていた有紗のコップをひったくって「ジュースいれてくる!」と席を立った。
有紗が後ろから「メロンソーダで!」というのを聞きながら扉を開く。



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