俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 早足で逃げようとする優羽の肩を城ヶ崎が掴む。
「逃がすかよ」

 ──きゃーっっ!
 ほとんどハグかというような密着感で捕まってしまって、ロビーが一瞬ザワついた。

 役員の微笑ましげな笑顔がつらい。
 さすがに後輩の藤井も驚いていた。
 小さな声が耳に入る。
「吉野さん、逃げようとしたんですか?」

 そ、それは運動神経はあまり良くないけども。陸上部の元エースなんかに勝てるわけはないけども!
 そんなかわいそうな子を見るような目で見ないでっ。

「ほーんとうに往生際が悪い」

 くすくすと笑う城ヶ崎は楽しそうだ。優羽は知っている。優羽にいじわるする時は城ヶ崎はものすごく楽しそうなのだ。

 しかもその笑顔が憎めないから困る。

「お昼、お二人で行ってこられたらいいんじゃないですか?」
 そう言った藤井に城ヶ崎は優羽を解いて、顔を向けた。
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