俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 しかし、ときめくような状況ではない。

「やめて」
 とても近い距離から優羽は顔を逸らす。
 以前はとても好きだったはずなのに、悲しい思いをさせられて、しかも優羽が悪いかのように言われたのだ。ずっと傷ついた思いを引きずっていた。

 それを癒してくれて、思い切り優羽を甘やかしてくれているのが城ヶ崎だ。

 城ヶ崎と付き合うようになって、甘やかされて、愛されることはこういうことなんだと優羽は知った。それは今まで経験したことがないものだった。

「アイツ、誰?」
「あいつ?」
「ロビーで熱く抱き合ってたんだって? なんのドラマかと思ったって話題らしいぞ。社内でも噂になってる」

 吐き棄てるように柴崎に言われて、優羽はカッと頬が赤くなったのを自覚した。
 会社の人達に見られたかもとは思ったけれど、噂になっているなんてことは知らなかった。

 その顔を見て、柴崎は口元に笑みを浮かべる。けれど、それは嬉しそうなものではなくて、優羽にはひどく不快に感じるものだった。
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