俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 けれど、優羽は頷くことはできなかった。頷いてしまえば、処分が下される。処分があるかもと思った時の怖い気持ちを優羽は知っている。
 だからこそ、事実でも怖くて頷くことができなかった。

 課長は優羽の気持ちはもちろん知らないだろうけれど、何かを察してふっと表情を緩めた。
「うん。いいですよ。カメラで事実は確認できていますし、人事は吉野さんだけではなくて、ヒアリングに動き出している。怖かったですね。もう、大丈夫ですよ」

 それを聞いて、優羽の大きな瞳からぽろっと涙がこぼれてしまった。
 ──怖かった。

 けれど、優羽の周りでは城ヶ崎だけではなく、いろんな人が優羽を護るために動いてくれていた。そのことに安心したのだ。

「あのね、吉野さん、柴崎さんは優秀な営業マンでもあるし、彼の口が上手いのは周知の事実です」
 課長が何を言いたいのか分からなくて、優羽はその言葉に相槌を打つ。
 厳しく顔を引き締めるのを見ていた。

「けど、人は言葉だけで判断するものではない。普段から彼が行っている行動や無意識の発言や、そういったものも含めて判断するものです。ヒアリングによってそれが今あぶりだされている。上手なことを言ったとしても会社というものはそれを鵜呑みにすることはありません。彼はそれが分かっていない。優秀なのに浅はかで残念です」
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