俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 今までの優羽や藤井、また法務部の女性の話からすると、その元カレとかいう柴崎という男にはまだ何かありそうだと城ヶ崎は察していた。

 それは案件を抱えたことのある弁護士という立場だからこその勘が働いたのもあるだろう。

 ──氷山の一角。
 見えているのはほんの一部だけで隠れている部分の方が大きい。弁護士という業務の中では物事の裏側や隠れていたものがすべて見える瞬間がいくつもある。

 そんな案件をいくつも見てきた城ケ崎だから分かるものだ。
(このままで済ますものか)

 優羽は表立って大騒ぎする性格ではないが、だからといってもみ消されてしまっていい訳ではない。
 顧問弁護士の立場を利用して、城ヶ崎は社内調査を開始する。

 調査を進めていくにつれ、柴崎に関してはパワハラ、セクハラの疑義のある事案がいくつも上がってきて、城ヶ崎はその調査結果を人事部に提出した。

 おそらく姫宮商事の社風からすると、それを放っておくことはないだろうと思った。もちろん、提出した城ヶ崎の立場も慮ったところはあっただろうが。
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