俺様弁護士は激愛を貫きとおす
「吉野さんのことをきっかけに、社内では徹底的に調査が実施されました。柴崎さん、後輩の実績を指導だと言って自分につけたりしましたね。またそれ以外にもあなた自身が問題だと思っていなくても社内コンプライアンスに反しているもの、ガバナンスに問題のある行動が散見されました。事案の内容を鑑みて譴責(けんせき)とし、異動人事を発令します」

 柴崎は崩れ落ちるように席にもたれる。
 人事による調査が行われていたのは間違いないだろう。だから同僚の態度がおかしかった。

 指導の範囲ならば問題ないと判断して後輩の実績を自分につけたことなど何度もある。指導しているのだから当然なのだと思っていた。

(コンプラ違反? ガバナンスに問題?)
「将来はどうなる……」
「譴責です。今回は吉野さんも大事にはしたくないとおっしゃったのでそれで済んだんです」

 譴責とは、始末書を提出するいわば厳重注意による懲戒処分だ。最も軽い懲戒処分ではあるが、処分は処分だ。人事の履歴には残るし異動と言われれば逆らうこともできない。 

「異動、なんですよね」
「本社営業部には置いておけません」
「人事は発令済ですね?」
「関連子会社への出向です」
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