俺様弁護士は激愛を貫きとおす
「急にお邪魔してしまったので、事務所の皆さんへと思いました。おこがましいですね……」
「有名なケーキ屋さんのお菓子だ。おこがましいなんて。みんな喜びますよ。私も大好きです」

 とても落ち着いた雰囲気で優羽に笑顔を向けてくれて優しい人だった。

「どうぞ。ご案内しましょう」
 そう言って片桐は中に案内してくれた。

 事務所の中は細かく区切られていて、弁護士ごとに部屋が与えられているようだった。絨毯の敷かれた廊下は静かだ。

 その中の一つのドアの前で片桐は足を止め、ドアを軽くノックする。
「昂希、今いいか?」
「どうぞ」

 中から声が聞こえて優羽はどきんとする。仕事中の城ヶ崎を目にするのは、あの会社で見たとき以来だ。

「大事な人を連れてきたぞ」
 デスクの向こうで城ヶ崎が驚いた顔をしていた。
「優羽。どうして一緒なんだ?」

「受付で偶然一緒になって。ご挨拶させてもらったよ。差入れもいただいてしまった」
 そう言って、片桐は手に持った紙袋を軽く掲げる。
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