俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 優羽と城ヶ崎が後部座席に乗っている間に荷物をトランクに入れ、運転席に戻ってきて車は静かに動き出す。

「定時の到着で良かったですね」
 高井は城ヶ崎に穏やかに声をかける。

「そうですね。少しでも早く帰りたかったので遅れが出たら暴れたかもしれません」

 城ヶ崎が澄まして答えるのを聞いて高井はくすくすと笑っていた。だいぶ慣れた関係のようだった。

「普段の顧問先への訪問なんかも高井さんがしてくれているんだ」
 城ヶ崎が優羽にそう説明する。

「どうされますか? 直接マンションでよろしいですか?」
「はい。それでお願いします」
 そんな会話を続ける最中も、城ヶ崎は優羽の手を繋いで離さなかった。

「優羽は? お腹減っていないか?」
「そうね、でも家にあるもので何か作ろうと思えばできるから大丈夫よ」

 きゅっと繋がれた手に力がこもる。そして、するっと指の間を撫でられて、どきんとした。

「家にあるもの、か。それだけのことがどうしてこんなに嬉しいんだろうな」
 繋いだ手を城ヶ崎は口元に持ってきて、軽く優羽の指先にキスをする。

 それだけでも親愛だけとは違う何かを感じて、優羽の鼓動はさらに大きくなってしまった。


 
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