俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 憧れていたのが自分だけではないと知って、城ヶ崎はかなりショックを受けたけれど、そのニックネームはなかなかいいと気に入っていたのだ。
 そんな優羽とたった一度接点を持ったことがある。

 文化祭で優羽と城ヶ崎が主演に選ばれたのだ。いや、正確には違う。ヒロインの候補が優羽だと聞いて、もし優羽だったら自分を相手役に指名して構わないと文化祭委員に言った。

 委員担当の生徒は今まで城ケ崎がそういうことで声を掛けられても目立つようなことは絶対にしないと知っていたので、喜んで相手役にしてくれた。

 演目だった『ラプンツェル』は知らなかったが、どんな話なんだろうと城ケ崎は調べてみた。すると、塔に閉じ込められていた女性のところに王子が夜な夜な訪ねて行き挙句の果てに妊娠させる話だと知って、嘘だろ……となってしまったものだ。

 もちろんそのままの話ではないと聞いていたけれど、自分が優羽のところに夜な夜な忍んでいく、なんていうことを考えたら微妙な気分にはなった。
 実際に学校で上演するものはそれをもとにしたオリジナルストーリーで原作のエグさはかなり軽減された話だったのだ。

 果たして優羽はこの原作を知っているのだろうかと思って聞いてみた。
「城ヶ崎くんは知ってるの?」
< 54 / 284 >

この作品をシェア

pagetop