俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 心に小さな棘が刺さったようだ。
 普段のように過ごしていれば、忘れていられるのに時折ちくりと心を刺してくる。

 日中は仕事で夢中になっていればそんなことは思い出さないけれど、ふと、手が空いたときには思い出してしまう。
 パソコンの電源を落としながら、優羽は軽いため息が漏れてしまうのを止めることができなかった。

 それを聞いた後輩が「吉野さん、すみませんでした」と優羽に頭を下げる。
 この日は提出されるはずの書類が提出されなくて、その対応をしていたら残業になり遅くなってしまったのだ。ため息はそのこととは関係はない。

 残業になったのはその後輩の業務を手伝っていたからだ。
 優羽の後輩が担当となっていたのだが、手続きに必要な書類が提出されていないことは把握していた。けれど特に督促をしていなかったらしいのだ。

「だって、期限を切って案内しているのだし、提出されると思うじゃないですか」
 言っていることは間違っていないし、その気持ちも分かる。

「うん。でもね、せっかく気づいていたのなら2、3日前に念のための確認ですって連絡して構わないのよ?」
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