俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 そしてエレベーターを降り、外に出るとその顔だちも麗しい城ヶ崎が歩道の柵のところにもたれて待っていたのだ。
「優羽、お疲れ」
「城ヶ崎くん! ごめんなさい、今メッセージを見て」

 怒らせたくない。けれど、城ヶ崎はなんでもないことのように緩く笑った。
「うん。既読になっていなかったから、仕事中なんだろうなってのは分かった」

「忙しいんじゃないの?」
「暇ではないな。けど……優羽、言ったよな? 俺は記憶力には自信がある」
 にっと笑うその笑顔になぜか優羽は背中が寒くなる。

 名前で呼ぶこと。あれはまだ続いているということなのだろうか?そういえば先日も優羽からのキス云々、というのはうやむやになっていた。
 だからあれは、優羽としては城ヶ崎なりの冗談なのかと思っていたのだ。

「吉野さん、彼氏ですか?」
 後輩にそう聞かれて優羽は首を横に振る。
「いいえ」
 同時に城ヶ崎は頷いて「そうだよ」と答えていておかしなことになってしまった。

「優羽、照れ屋さんだからな」
 きゅっと抱き寄せられると優羽は戸惑う。けれど、まっすぐに突き刺すような城ヶ崎の視線には逆らえない。
 逆らうな、と言われているようだった。
< 68 / 284 >

この作品をシェア

pagetop