俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 それで城ヶ崎が逃がしてくれるとも限らないが。

「キス、だけ?」
 優羽の方はまっすぐ城ヶ崎を見ることはできなくて、その口元辺りに目をやりつつそう尋ねる。

 城ヶ崎が口角を上げて、唇が微笑みを形作った。
「それ以上でも構わない。お釣りが出るほどしてやろうか?」
 そんなことを言われるとは思わなくて、瞬間優羽は真っ赤になる。

「いや。それはいい」
 なんとも言えない空気になる。甘く、少しだけ隠微な秘密を共有する空気だ。

 優羽の手を握ったまま、城ヶ崎はウエイターに手を上げる。
「チェックしてください」
「かしこまりました」

 城ケ崎はスーツの胸ポケットからウォレットを出すと、カードを渡す。ウエイターが持ってきた伝票にサインを入れると、城ヶ崎は優羽の手をまた繋いで席を立った。

 まるで逃すまいとするかのようだ。
 繋いでいる手が熱い。優羽は自分の手がだんだんじっとりと汗ばんでくるような気がした。
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