俺様弁護士は激愛を貫きとおす
 コートを羽織るため、一旦手を離しても城ケ崎はすぐに優羽の手を探りあてて手を繋いでしまう。外に出てタクシーに乗っても繋いだままだった。
 そのくせ、一言も言葉を発しようとしないのだ。

 ──どうしよう。本当に手汗が気になる……。
 そっと手を離そうとすると、きゅっと握り返されて「なに?」と聞かれた。

「手……が」
「いやなのか?」

 そう尋ねる城ケ崎が微妙に不機嫌な気がする。怒らせたいわけではない。だから優羽は正直に言うことにした。今までの経緯からすると、優羽が正直に言うことには城ケ崎はきちんと答えてくれている気がするから。

「違うの。そうじゃなくて、手汗が……」
 城ケ崎は優羽の手を自分の方に寄せてその手をじっと見る。
 そして、優羽の手のひらをそのすらりとした綺麗な指先ですうっと撫でたのだ。

 それは思わぬ感覚を優羽にもたらして優羽は背中がぞくっとした。
「そうかな? 少ししっとりはしているが、手汗ってほどではないだろう」

 そして優羽を見ながら整った形の唇をその手に寄せて、軽く口づけたのだ。
「小さくて可愛いだけだ。それに手汗かいてるからなんだって?」

「だって、恥ずかしい」
「恥ずかしがっている優羽ってたまらなく可愛いな」
 城ケ崎はとても頭がいいはずなのに時々言葉が通じないような気がするのはどうしてなんだろうか?

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