俺様弁護士は激愛を貫きとおす
「は? なにを……」
「私、帰るね」
 上にいた城ヶ崎を押しのけて、優羽はソファの横に置いていたバッグを持ち、玄関に向かった。

「優羽!」
 城ヶ崎は玄関まで追ってきて優羽の腕を掴んだ。
 掴まれて見た城ヶ崎の顔はとても焦っているようにも見え、この人もこんな顔をするのか……と優羽はぼんやり思った。

「どうするつもりだ? こんな時間に」
「ん? 帰るよ」
「終電なんかもうないだろう」

「タクシーか、ネットカフェか、ビジネスホテルか……とりあえず何とかするから」
 そう言って優羽はふわりと笑う。

「そんなに、俺がイヤか」
「そういうわけじゃないけど」
 城ヶ崎がいやなわけではない。どこまでいっても不健全な二人の仲がつらいだけだ。

 優羽の腕を掴んだまま城ヶ崎は離さない。そして目を伏せて前髪をかきあげた。
「もう遅い。なにもしない。指一本触れない。約束するから、こんな時間にどこかになんて行くな」

 普段揺らぐことのない城ヶ崎が少しだけ必死で焦っているようにも見えた。
 優羽のことなんて放っておけばいいのに。
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