イケメンエリート、最後の独身


 すると、ホヨンが萌絵の隣にきて、さりげなく耳打ちする。

「そういう事だから。
 今夜は謙人さんの好きにしてもらう。
 俺と萌絵が話してる時の謙人さん、超怖くないか?
 謙人さん、久しぶりに酔っぱらって自制心がどっか行っちゃってるのかも」

 萌絵も謙人の視線は感じている。ねっとりとしたハリーポッターに出てくる蛇のようなおどろおどろしい視線を。
 ホヨンは萌絵の肩をポンと叩いて、じゃあねと言った。そして、謙人に視線を向ける。
 怖いもの知らずのホヨンは、謙人に軽く会釈をして奥にいるスタッフの元へ消えて行った。

「萌絵ちゃん、もう出れる…?」

 謙人はまだ疲れているようだった。

「はい、出れます」

 萌絵が急いで帰り支度を始めると、謙人も立ちあがった。でも、よろめきそうになり、萌絵はすぐに謙人の腕を掴む。

「謙人さん、本当に大丈夫ですか?」

 謙人は萌絵の腕を掴んだまま、苦笑いをする。

「タクシーに乗ったら、もう少し萌絵ちゃんの膝を貸してほしい。
 後、ちょっとだけ横になったら、すぐに元気になるから…」


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