イケメンエリート、最後の独身

恋のキューピットはご機嫌斜め⁈



 謙人はタクシーの中で、また萌絵の膝を借りて横になっていた。自分の不甲斐なさに本当に泣きそうになる。
 謙人は薄れてしまっている今夜の記憶を必死に辿っていた。
 可愛くドレスアップした萌絵を見て、皆が驚いて褒め称える。それは謙人にとっても最高の時間だった。萌絵は自分の恋人ではないけれど、でも、愛する女性が美しくなる事は本当に素晴らしい。
 そして、皆で乾杯をする。
 萌絵の隣は明智君とホヨンだった。そのあたりから記憶が曖昧になる。
 映司が謙人の恋心を散々煽ってきた。恋に落ちた男性の愚かさを自分の体験談を踏まえて延々と話し続ける。
 そして、それ以上に、三十五歳を余裕で過ぎている独身生活を謳歌していた男の堕ちっぷりは生々しくて悲惨だと、しつこいくらいに聞かされた。
 謙人はBGMのように映司の話を聞きながら、視線は萌絵だけを追っていた。
 何だか、嫌な予感がしていた。
 謙人の視線は萌絵を追うけれど、萌絵の視線はホヨンを追っている。


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