イケメンエリート、最後の独身


 謙人が精神的におかしくなっている間に、明智君と萌絵は談笑をしていた。
 その会話をホヨンと映司が聞いて、何やら楽しそうに笑っている。
 謙人はその談笑の輪に入りたかった。でも、普段のは謙人らしさが分からなくなっている。心臓だって飛び出そうな勢いだ。

「もえっていい名前だね…」

 ほら、口を開けば自分らしくない言葉が出てしまう。
 俺は一体どうなってしまったのか…?

「い、いやいや、俺の幼稚園の時の友達に萌ちゃんっていう子がいて、可愛い名前だな~ってその頃思ってて」

 謙人のしどろもどろの言い訳は映司には通用しなかった。その証拠に謙人を見る映司の目は必死に笑いを堪えている。
 萌絵は首元まで真っ赤になっていた。
 こんなにいい男に囲まれてちやほやされて、謙人に限っては好き好きオーラがあふれ出ている。
 直立不動で真っ赤になっている萌絵は、きっと、まだ男を知らない。
 そんな謙人の余計な妄想は、自分自身を窮地に追い込み破壊へと導き始める。その先にあるのは地獄か?天国か?

 萌絵のはにかむ笑顔に謙人の目は釘付けになっている。


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