イケメンエリート、最後の独身
「じゃ、次は謙人さん、自己紹介をお願いします」
謙人が妄想に浸っている間に、他のメンバーの自己紹介は終わっていた。急に指名された謙人は、持ち前のクールで大人っぽい自分を演じる自信がない。
「ま、前田謙人です。どうぞよろしく…」
映司の面白がった視線が気になって、謙人は映司を睨み返す。映司の目はそれでも笑ったままだ。
「謙人さんはほぼほぼリモートで会社には週に一回しか来ません。
だから、このオフィスには」
「い、いや、明智君…」
謙人は明智君を見ると、困ったように首を横に振った。そう、本当に困っている。このピンク色の感情に。
「今月からオフィス勤務が多くなると思うんだ。
今、住んでる鎌倉の家を妹夫婦が使う事になりそうだから」
それは嘘じゃない。まだまだ先の夏休みの話だけれど。
「そうなんですね。了解しました」
明智君は優しい男だ。どういう状況でも人の揚げ足を取ったりしない。映司と違って。
「それじゃ、萌絵さん、しばらくはホヨン君から仕事のやり方を教わってください。
年齢的にはそんなに変わらないから仲良くできると思うし」
「僕の方が年下ですよ。僕はまだ25歳だし」
明智君は笑顔で頷いた。