イケメンエリート、最後の独身
そのキスをもっと味わえば、更に萌絵の体の温もりを知ってしまえば、謙人は犯罪者になってしまうかもしれない。
萌絵なしでは生きていけない。萌絵の全てを自分だけのものにしてしまいたい。
その熱い感情は、暴れ回る獣みたいに、謙人の自制心では抑える事は不可能になる。それだけは避けたかった。
萌絵が同じように謙人の事を想っていてくれれば、謙人も好きという気持ちをもっとぶつける事ができたのだと思う。
でも、萌絵の気持ちは揺れている。
ホヨンに恋をしているなら、謙人は遠ざかるしかなかった。
謙人の車は海沿いの道を軽快に走っている。珍しく渋滞もない。
謙人は運転席の窓を全開にした。もう春が近づいている事を感じさせる潮の匂いに心が癒される。
萌絵からの電話で、一つだけ分かった事がある。
それは萌絵に会いたくてたまらないという事。
その想いは謙人の中で朽ち果てる事はなかった。