イケメンエリート、最後の独身
「車で来てるんだ。ちょっとドライブしない?」
謙人は考えてみれば、萌絵に出会った時からずっと降参状態だった。
萌絵のピンク色のオーラが見えている時点で、萌絵のピンク色に染まりたいとずっと思っていた。
でも、今の萌絵は濃いピンク色とゴールドに近いベージュ色の二層のシャボン玉を引き連れている。
…俺はいつから霊媒師か占い師の能力を身につけたのだろう。それも、萌絵一択とか惚れ過ぎている証拠だ。
謙人の問いかけに、萌絵は立ち上がり嬉しそうに頷いた。萌絵の全てが愛おしい。それだけで胸が苦しくなる。
謙人は萌絵の体を引き寄せ、肩を優しく抱いた。もう、自分を縛り付けるのはやめた。自分に正直になる。どの道、萌絵はドイツへ旅立ってしまうのだから。
謙人の車は、BMWのセダンタイプを更に自分仕様にカスタマイズしたほぼ一人用のものだった。
自分以外の人間を乗せる事を想定していなかったので、助手席の座り心地はあまりいいものではない。
今となってはそんな昔の自分を呪うしかなかった。
謙人にとって萌絵はお姫様以外の何者でもなく、全てにおいて最高級のものを差し出したいと思っている。