イケメンエリート、最後の独身
「萌絵ちゃん、座り心地が悪くて本当にごめん。
そのシート、ちょっと固いだろ?」
萌絵は座り心地を確認している。
「全然大丈夫です。それよりすごくカッコいい車ですね」
謙人にとって車は個人的な趣味だった。そのせいか、何だかすごく恥ずかしい気持ちになる。
色々な意味で、萌絵は謙人の秘密の扉を簡単に開けてしまう。いや、謙人自身が自ら開けているのかもしれないけれど。
「萌絵ちゃんが東京に居れるのもあと少しだから、東京の生活を満喫しよう。
今日から、毎日、俺に付き合う事、OK?」
さっきまで、萌絵と会う事をためらって悶々としていた男の発言とは思えない。ずっと萌絵に会う事を避けていた人間なのに。
でも、萌絵は、そんな謙人の言葉に嬉しそうに大きく頷いた。
謙人は今までの全てのネガティブな考えを、今、ここで捨てた。自分自身の気持ちや考えはもう今さら必要ない。
萌絵と一緒にいたい…
それだけでよくないか?
「じゃ、今夜は美味しいものを食べに行こう」