イケメンエリート、最後の独身
萌絵は窓から見える光景に釘付けになっている。
謙人もこの個室から見えるこの風景が一番のお気に入りだった。他にも個室はあるけれど、この部屋じゃなければ意味がない。
そんな単純な好みが萌絵と共有できて、謙人はそれだけで嬉しかった。
「ここは料理も美味しいんだ。
萌絵ちゃんにたくさんの感動を与えたい。日本も、いや東京も捨てたもんじゃないって事をたくさん知ってほしいから」
席について向かい合った二人は、何だかぎこちなかった。謙人自身、その理由は今までの自分の態度にあると、ちゃんと分かっている。
ワインで乾杯をした後、謙人はゆっくりと話し始めた。
「萌絵ちゃん…
ずっと、萌絵ちゃんの事、避けるような態度をとって本当にごめん。
あの夜、自分の素直な気持ちを萌絵ちゃんにぶつけて、後になってすごく後悔したんだ。
萌絵ちゃんの心がホヨンに向いている事は何となく分かっていて、だけど、たまらなくなって萌絵ちゃんにあんな事を言ってしまった。
俺は…
こんな風に他人の事を真剣に想った事がなくて、だから、この手の事に関しては、中学生と同じレベルで…」
…は? 俺は何を言ってるんだ?
グダグダと説明しながら、謙人は、本気で自分自身にげんなりしている。