イケメンエリート、最後の独身


 謙人は萌絵の顔をずっと見つめている。一時間でも百時間でも見つめていられる。
 …こんな俺は、もう、完全に末期状態だ。どうあがいても救いようがない。

「今日を機会に、萌絵ちゃんが出発する日まで、素直な俺になろうと思ってる。
 ここしばらくずっと考え過ぎて、何が正解なのか分からなくなってるんだ。だから、萌絵ちゃんは何も気兼ねしないで俺に付き合ってほしい」

 謙人が喋り続けている間に、前菜がもう用意されていた。
 萌絵のワイングラスも空っぽになっている。
 謙人は肩をすくめて微笑んだ。自分ばかり話していた事を反省しながら。

「謙人さん、私の気持ちを話していいですか…?」

 謙人はドキッとした。
 そんな萌絵の告白を聞くなんて想定外だ。

「萌絵ちゃん、ごめん…
 萌絵ちゃんの気持ちはまだ聞きたくないんだ。
 いつか聞きたい。いつか必ず聞く。でも、それは今日じゃなくて…
 お子ちゃまで本当にごめん。今の俺の精神年齢はまだ13歳くらいみたいで、あり得ないほどガキなんだ。
 ヤバイだろ? 俺自身、戸惑ってるくらいだから」


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