イケメンエリート、最後の独身
「謙人さん、レースのカーテンをちょっと替えてみたんです」
萌絵は部屋に入ると、すぐにそう言った。
「陽の光は通すけど、外の風景は全く見えないものに替えました。
謙人さんが来ても怖がらないでいいようにと思って。
今は夜だから分からないですけど」
謙人は感動して涙が出そうになる。
そして、そんな萌絵を胸の中に引き寄せた。
「また俺が来てくれるって思ってたんだ…」
萌絵は謙人の胸の中で恥ずかしそうに頷いた。
謙人は湧き上がる愛しさで感情がコントロールできない。萌絵の体を強く抱きしめながら、無理やり深呼吸をした。
内なる獣を手懐けるには、理性が感情を上回らなければならない。でも、今は、完全に感情に飲み込まれている。
「萌絵ちゃん…
俺は萌絵ちゃんのことが大好きで、でも、きっと、萌絵ちゃんはそんな風には思ってなくて」
「そんなことない!」
「ううん、いいんだ。
俺はこうやってたまに我慢できなくなるけど、もし、萌絵ちゃんが本気でそんな俺が嫌な時は、はっきりと言ってほしい」