イケメンエリート、最後の独身
そして、二日後、謙人は萌絵と雲シートの上に寝転んでいる。
実はこのシート、人気があり過ぎて予約制になっていた。謙人が検索した時は、もうすでにこの週末はソウルドアウトだった。
謙人は今まで培ってきたあらゆる人脈を使って、このシートに辿り着いた。
施設側は全ての席を完売にはしない。そういうからくりを分かっている謙人はその手のツアー会社の人間に頼み込んだ。
自分が行くとは言えない。知り合いの子供に頼まれたと噓までついた。
でも、今、萌絵とふかふかの狭い丸型ソファに寝転んで頭上に広がるプラネタリウムを見ている。プラネタリウムの内容なんてどうでもよかった。
真っ暗闇の中、萌絵の香りとピンク色のオーラに包まれている、それだけで十分だった。
萌絵は仰向けに寝転んでプラネタリウムを鑑賞している。
謙人は横向きに寝転んで萌絵だけを見ている。ウキウキし過ぎて萌絵の横顔しか見ていない。
「謙人さん、ちゃんと見てますか?」
真っ暗闇の中、萌絵の声が耳元をくすぐる。
「見てるよ」
「嘘、ずっとこっち側ばかり見てるじゃないですか?」
萌絵は笑いながら、謙人の方に向きを変える。
謙人が顔をずらせばすぐ萌絵にキスができるそんな近さだ。手は握っているけれど、キスとかしてもいいものか?