イケメンエリート、最後の独身
こんな穢れのない純粋な場所で、たくさんの一般人の中でキスをした事で、謙人の知らない扉が開いてしまった。
このスリルはたまらない。
この溢れ出るアドレナインに負けないよう、必死に理性を保つ自分が愛おしくてたまらない。
今までのデートでこんなシチュエーションになったら、近くのホテルに入ったり、即行で家へ帰った。
それなのに、今の状況は、悶々とこの気持ちを抑えつけるしかない。もう、拷問を受けているとしか思えない。
萌絵を抱きたくてたまらないのに、隣では年配夫婦が笑顔で寄り添い、その前では思春期真っ只中の中学生のカップルが悶々とした中、必死に冷静を保っている。
自由気ままに生きてきた謙人にとって、初めて味わう試練だった。
でも、何だか癖になりそうで、それはそれで怖い…
「萌絵ちゃん… 苦しい…」
謙人は萌絵の胸の中に顔をうずめる。
萌絵は笑いながら、謙人の背中を優しくさすってくれる。
「もう出ます?」
謙人は首を横に振った。