イケメンエリート、最後の独身


 萌絵は悶々とする謙人を気遣って、耳元でそんな事を囁いてくれる。
 謙人は落ち着くどころか、ますます気持ちが昂ってしまう。
 耳元でささやく萌絵の口を優しく塞いだ。
 今度は五秒ほどのディープキス。

「ちょっと、頭を冷やしてくる…」

 謙人はそう言って、天国のようなソファから離れるしかなかった。
 前に座るラブラブな中学生カップルがこの世のチャンピョンに思えた。
 謙人は煩悩を振り払いながら、必死の思いで外に出た。
 そして、エントランスの長いすに座り、静かに目を閉じる。
 中学生のカップルや年配の夫婦にできて自分に出来なかった事が悔しいのか、何だか涙ぐんでしまう。
 いや、この寂しさの理由は、ちゃんと分かっている。
 考えないようにしているけれど、こうやって一人になるとどうしても考えてしまう。

 萌絵が旅立った後、俺は生きていけるのだろうか…


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