イケメンエリート、最後の独身
 

 この日の夜は、謙人のプランが準備されていた。
 翌日の日曜日も、萌絵のリクエストで東京ディズニーランドとシーを掛け持ちで巡る強行スケジュールを組んでいるため、せめて、この時間は謙人の好きなようにさせてほしいと頼まれた。
 謙人は、話題の最高級スパを取り入れた外資系のホテルを予約していた。

「今夜はここでゆっくり過ごそう」

 謙人はクリーム色のスーツケースをゴロゴロ引っ張っている。そのスーツケースには萌絵のお泊り道具の荷物が入っていた。そんな安っぽいスーツケースを恥ずかしがらずに笑顔で運んでくれる謙人は、正真正銘の優しい人間だと思う。
 謙人は、超一流スタッフが並んでいるホテルのフロントで、そのゴロゴロと音のうるさいスーツケースを引きながら、VIPの待遇を受ける。
 きっと、そのギャップにときめかない女子はいない。
 謙人はホテルのスタッフにそのスーツケースを手渡すと、たくさんのカードキーをもらった。

「とりあえず部屋で休憩しよう」


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