イケメンエリート、最後の独身


「ここは大事だろ?
 クタクタになった体を癒すにはお風呂が一番。それも二人で入れるやつね」

 謙人のニコニコは止まらない。萌絵を抱きしめながらウズウズしているのがよく分る。
お風呂にはすでにお湯が張っていて、赤やピンク色の花びらが二人を誘うように浮いている。萌絵も部屋に着いたばかりなのに、何だかお風呂の気分になってしまう。

「謙人さんがクタクタなのは分かるんですが…
 私はお腹がペコペコです」

 萌絵は肩をすくめて笑った。
 今日のランチは、プラネタリウムの時間と重なり軽く済ませた。その後は、今夜のディナーのために何も食べていない。カフェでチャイラテを飲んだくらい。
 謙人はちょっと落ち込んだ顔をして、でも、すぐに萌絵を抱きしめた。

「そうだった。
 今夜のディナーは萌絵ちゃんの好きな物ばかりオーダーしたんだ。
 ほぼ海鮮祭りかな」

「そうなんですか!」

 萌絵は、抱きしめてくれる謙人の背中に両腕を巻き付ける。
 お肉より魚が好きな萌絵の事をちゃんと覚えていてくれただけで、萌絵は嬉しかった。
 そして、謙人とのスキンシップは、今の萌絵には欠かせない。他人から見た二人は完全な恋人同士の関係で、萌絵はその事を否定する気はなかった。
 だって、謙人の事を知れば知るほど、好きで好きでたまらなくなる。

 だけど…


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