イケメンエリート、最後の独身


 ディナーを終えた萌絵は、窓際の大きなソファに座っている。
 少しだけ窓が開いているせいで、ひんやりとした心地よい空気が萌絵の肌をくすぐる。
 東京は本当に美しい街だ。
 ダイヤモンドが散りばめられたような綺麗な夜景。子供の頃に夢見た非現実の世界が、今ここにある。
 そんな中、萌絵は贅沢の極みの中にいるのに、それが贅沢な事なのか分からなくなってしまう怖さも感じていた。
 そんな事を考える時点で、萌絵は東京のこういう生活が向いていないと実感してしまう。
 こういう表面的な幸せになど興味はない。
 萌絵は、今回、日本へ戻ってきて、自分という人間がよく分かった気がした。根っからの貧乏性、精神的な幸せを追い求める人間なのだと…
 でも、そんな萌絵も恋に落ちた。
 今は女性としての幸せを嚙みしめている。謙人へ愛情は驚くほどに純粋で、一生に一度、訪れるか訪れないかの奇跡だった。
 そして、謙人はソファでくつろぐ萌絵の体を優しく持ち上げる。細身に見える謙人だけれど、裸になれば筋肉質だった。萌絵の事など簡単に持ち上げてしまう。

「萌絵ちゃん、そろそろいい?」


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