イケメンエリート、最後の独身


「萌絵ちゃんが東京で働くって事は、でっかい大冒険みたいなものなのかな?
 怖がらなくても大丈夫、すぐに慣れるよ」

 謙人はエレベーターから出る時に、萌絵の背中にそっと手を当ててくれた。
 萌絵はまた泣きそうになった。謙人の何気ない励ましは、魔法の言葉のように萌絵を元気づけてくれる。

 EOCのビルと駅は地下で直結していた。
 萌絵は地下鉄に近い出口の番号を、ガラケーで写メをする。明日は何があっても迷いたくない。
 するとそんな萌絵の姿を見ていた謙人が、萌絵をその番号の看板の前に立たせた。

「ほらほら、遠慮しないで。俺が撮ってあげるから」

 謙人は何を勘違いしているのか、萌絵が記念写真を撮っているのかと思っているらしい。

「はい、笑って~」

 そんな最強のスマイルで言われたら笑うしかなかった。
 黄色の3Bと書かれた大きな看板の前で記念撮影なんて、いくら田舎者の私でもあり得ませんから。
 と頭では思いながら、でも謙人の笑顔を見ていればやっぱり不思議と笑ってしまう。

「萌絵ちゃん、もう一枚いきま~す」

「え? あ、はい… もう一枚?」


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